開業届とは?個人事業主・フリーランス・副業で出すメリットと青色申告の65万円控除、出さないほうがいい2つのケース
「会社を辞めてフリーランスになったけれど、開業届は出したほうがいいの?」「副業の収入が増えてきたけれど、何か手続きが必要?」。独立したばかりの方や、副業で収入が出始めた方から、こうした疑問をよく聞きます。
本記事では、開業届とは何か、出すとどんなメリットがあるのか、出し方といつまでに出すのか、そして出さないほうがいい場合について、順番に整理します。
※この記事は2023年11月に公開した動画をもとにしています。動画の後に、令和8年度の税制改正で青色申告特別控除の金額と要件が見直されました(令和9年分から)。記事では、国税庁のサイトで確認した内容を書いています。

1. 開業届とは?
開業届とは、自分で事業を始めた人が税務署に出す書類です。正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
1-1. 開業届を出す人の例
開業届を出すのは、個人事業主やフリーランスなど、自分で事業を始めた人です。たとえば、次のような方が当てはまります。
- 会社を退職して、Webデザイナーとして独立した
- 趣味で作っていたアクセサリーを、オンラインショップで本格的に売り始めた
- 友人の結婚式の写真を撮っていたが、知らない人の結婚式やポートレートも撮るようになり、副業の収入が出始めた
意外と知られていないのが、3つ目の副業ワーカーです。副業であっても、事業として収入を得始めたら、開業届を出す必要があります。
1-2. 「フリーランスです」と名乗っても、税務署には伝わらない
ここで勘違いしやすいのが、「個人事業主やフリーランスになったら、自動的に開業したことになるのでは?」という点です。答えはノーです。
個人事業主やフリーランスというのは、あくまで呼び名です。「会社を辞めて、今日からフリーランスです」と宣言すれば、周りの人は「あの人はフリーランスなんだな」と受け止めてくれます。
しかし、税務署はそうはいきません。会社を辞めたからといって、税務署が個人事業主として扱ってくれるわけではありません。税務署に「この人は事業を始めた」と伝える書類が、開業届です。
2. 開業届を出すメリットは「青色申告」が使えること

開業届を出す一番のメリットは、確定申告で「青色申告」を使えるようになることです。青色申告を使うと、控除を受けられるので、税金の面で得をします。
2-1. 青色申告には「青色申告承認申請書」も必要
動画では「開業届を出せば青色申告が使える」とお話ししましたが、正確には、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に出す必要があります。開業届だけを出しても、青色申告にはなりません。
青色申告承認申請書の提出期限は、国税庁のサイトによると次のとおりです。
- 原則:青色申告をしたい年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に開業した場合:開業した日から2か月以内
開業届を出すときに、青色申告承認申請書もあわせて出しておくのが確実です。
2-2. 白色申告と青色申告の違い
会社員時代の僕は、確定申告のことも、青色申告・白色申告のことも全く知りませんでした。青以外にも黄色や緑、赤があるのかな、くらいに思っていたほどです。
自分で事業をやると、税務や財務にとても詳しくなります。これも、自分で事業をやることで得られるメリットの1つだと思っています。
確定申告には、白色申告と青色申告の2つがあります。
白色申告は、帳簿の付け方が比較的簡単な代わりに、青色申告のような特別控除がありません。お得感はゼロです。一方の青色申告は、特典がたくさんあります。事業を始めるなら、青色申告一択だと僕は考えています。
3. 青色申告の2つの大きな特典

青色申告の特典の中でも、大きいのが次の2つです。
3-1. 最大65万円の青色申告特別控除
1つ目は、青色申告特別控除です。条件を満たせば、所得から最大65万円を差し引けます。
国税庁のサイト(令和8年4月1日現在)によると、65万円の控除を受けるには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 事業所得(または不動産所得)があり、複式簿記で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に付けて、期限内に申告する
- e-Taxで確定申告をする、または電子帳簿保存を行っている
複式簿記で記帳していても、e-Taxや電子帳簿保存をしていなければ55万円、簡易な帳簿の場合は10万円になります。
なお、動画では「年間65万円得する」とお話ししましたが、65万円は所得から差し引ける金額です。税金が65万円安くなるわけではありません。実際に軽くなる税金は、65万円に所得税や住民税の税率をかけた分です。たとえば所得税の税率が10%の方なら、住民税(10%)とあわせて約13万円が目安になります。
3-2. 令和9年分から控除額が変わる
令和8年度の税制改正で、青色申告特別控除は令和9年(2027年)分の所得税から、次のように見直されます。
- 複式簿記で記帳し、e-Taxで申告する場合:65万円
- さらに、一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成・保存している場合:最大75万円
- 簡易な帳簿の場合:10万円(ただし、前々年の事業所得などの収入金額が1,000万円を超える場合は控除なし)
これから青色申告を始めるなら、最初から会計ソフトで複式簿記を付けて、e-Taxで申告する形にしておくとよいと思います。
3-3. 赤字を3年間繰り越せる
2つ目は、赤字を翌年以後3年間繰り越せることです。
たとえば、コーヒーが大好きな方が、小さなテイクアウト専門のコーヒースタンドをオープンしたとします。初年度は、お店を作るのにお金がかかります。お店を知ってもらうためにホームページも作ります。集客にも苦労して、初年度は赤字になったとします。
でも、大丈夫です。青色申告なら、この赤字を翌年以後3年間繰り越して、黒字になった年の所得から差し引けます。つまり、3年のスパンで事業を考えることができるのです。
もちろん、0円で始められるビジネスが一番いいのですが、ホームページやチラシ、お店など、初年度は何かとお金がかかりやすいもの。そんなときに心強い仕組みです。
3-4. 複式簿記は会計ソフトか税理士に任せる
青色申告で65万円の控除を受けるには、複式簿記で記帳する必要があります。複式簿記は少し複雑なので、会計ソフトを使うか、税理士に依頼するのがおすすめです。
僕は会計ソフトも税理士も使っていますが、最終的な申告は、ほぼ全部税理士に依頼しています。
4. 開業届の出し方と、いつまでに出すか

「開業届を出してみようかな」と思った方、ご安心ください。出し方はとても簡単です。
4-1. 税務署に出すか、オンラインで出すか
開業届の出し方は、大きく分けて2つあります。
- 税務署に出す
- オンラインで出す
オンラインで出せるサービスはいろいろありますが、僕のおすすめは「マネーフォワード クラウド開業届」です(動画の時点)。マネーフォワードのサービスは僕自身が日々使っていて、とても気に入っています。
マネーフォワード クラウド開業届では、「開業日はいつにしますか」「どんな事業ですか(カメラマン、フリーのWebデザイナー、アクセサリーショップなど)」といった質問に答えていくだけで、開業届を作れます。動画の時点では、最短5分で、家にいながら開業届を出せるとされていました。
僕が開業した当時は、こうしたサービスがなかったので、税務署に行くしかありませんでした。今は本当に便利になりました。なお、国税庁のサイトによると、開業届はe-Taxでも提出できます。
4-2. 開業日から1か月以内に出す
開業届は、事業を始めた日から1か月以内に出します。開業したら1か月以内、と覚えておいてください。
青色申告承認申請書の期限(原則3月15日、1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)も、あわせて押さえておきましょう。
4-3. 出し忘れていても、まず落ち着いて
「もう個人事業を始めているのに、知らなくて開業届を出していない。怒られる?」という方もいると思います。
大丈夫です。開業届を出していないことへの罰則はありません。ただし、事業を始めたら開業届を出すことは決まりなので、早めに出しておきましょう。
なお、開業届を出していなくても、確定申告で事業の収入と経費を申告すれば、税務署もその事業を把握します。とはいえ、開業届を出したほうが自分の中でもすっきりしますし、青色申告を使うための準備にもなります。
5. 開業届を出さないほうがいい2つのケース
ここまで開業届を出すメリットを見てきましたが、出さないほうがいい場合、少なくとも出す前によく考えたほうがいい場合もあります。大きく分けて2つです。
5-1. 配偶者の扶養に入っている
1つ目は、配偶者の扶養に入っている場合です。
事業を始めて収入を得るようになると、扶養から外れてしまうケースがあります。扶養から外れると、国民年金や国民健康保険などを自分で納める必要が出てきます。
扶養から外れるかどうかの基準は、税金と社会保険で違い、加入している健康保険によっても扱いが異なります。開業届を出す前に、配偶者の勤務先の健康保険などに確認しておくと安心です。
5-2. 失業給付を受け取る予定がある
2つ目は、失業給付(いわゆる失業保険)を受け取る予定がある場合です。
失業給付は、収入がない「失業の状態」であることが前提です。開業届を出すと、個人事業主として事業を始めた、つまり失業の状態ではないと扱われ、失業給付を受け取れなくなる可能性があります。
失業給付を受け取る予定がある方は、開業届を出す前に、ハローワークに確認してから判断してください。
6. まとめ
最後に、本記事のポイントを振り返ります。
- 開業届は、自分で事業を始めた人が税務署に出す書類。フリーランスや副業ワーカーも、事業として収入を得始めたら対象になる
- 「フリーランスです」と名乗っても、税務署が自動的に開業として扱ってくれるわけではない
- 開業届を出すメリットは、青色申告を使えること。ただし、青色申告には別に「青色申告承認申請書」が必要
- 青色申告の大きな特典は、最大65万円の青色申告特別控除と、赤字の3年間の繰り越し。65万円は所得から差し引ける額で、税金が65万円安くなるわけではない
- 令和9年分からは、複式簿記+e-Taxで65万円、さらに優良な電子帳簿で最大75万円に見直される
- 開業届は税務署かオンラインで出せる。期限は開業日から1か月以内
- 配偶者の扶養に入っている場合と、失業給付を受け取る予定がある場合は、出す前によく確認する
自分で事業を始める方、副業の収入が出始めた方は、ぜひ開業届と青色申告承認申請書を出して、事業を伸ばしていってください。個人事業主、フリーランス、そして副業ワーカーの時代だと、僕は強く感じています。
なお、ここでお話しした内容は、僕個人の考えと、記事を書いた時点で国税庁のサイトで確認した内容です。実際の手続きや判断は、必要に応じて税理士などの専門家に相談し、最新の情報は国税庁のサイトで確認してください。

