あまりにもヤバい事が起こると、現実味が無くて、なんか他人事みたいに思う事ってありますよね。
数年に一度の割合で起こるヘビー級のヤバい事態。
一週間ほど前、東京駅直結の大丸東京にてお客様のファッションコーディネートをしている時にそれは起こりました。
その日もスタイリングは順調に進み、カジュアルとフォーマルのどちらもいける素敵なコーディネートがサクサクと決まりました。順調順調。事前に下見しておいたおかげです。ジャケットもシャツも購入手続きが済み、最後に靴を選びました。イタリアやスペインの色気のある靴を何足かお客様に履いて頂き、最後は最も用途に合ったスペインの靴に決まりました。全て滞りなく終了し、さて帰ろうかと席を立つと…
無い。
3分前までそこに置いてあった僕のクラッチバッグが無い…
いやいやいや、そんなハズはないと周囲を探しますが、やはり無い。。
靴がたくさん並べてあるラックを見ても、床を見ても、さっきまで置いてあったベンチにも、どこにも無い。
いやいやいやいや!と今度はさっきより本気で探すけど、本当に無い。
え?マジで…?
徐々に血の気が引くのが分かる。
…ウソでしょ。
もしかして、これって…
置き引き?!
そうなんです。ワタクシ、大丸東京でお客様のコーディネート中に財布など貴重品一式を入れたクラッチバッグを置き引きされてしまったんです。
それからの事はご想像通り。銀行のキャッシュカードやクレジットカード等を全て止め、警察へ行き、被害届けを出し、電子マネーもキャッシュも何もなく、本当に1円も持っていない状態で東京駅で途方に暮れました。現金だけならまだしも、つい先日の誕生日に妻が買ってくれたお財布などお金に換算出来ないものを盗られてしまったため、めちゃくちゃ凹みました。
盗られたその日よりも、むしろ翌日からの方が何かにつけて「あ、そうだ。アレも盗られたんだった。」と思い出してしまい、ボディブローのように効いて来ます。
数日間は、ため息を何度もつく憂鬱な毎日。そろそろ気持ちを切り替えないといけないと過ごしていたある日。
先日コーディネートしていたお客様から現金書留が届いているとの事。
はて?何だろうと思い、封筒を開けてみると…
お見舞い金が入っていました。
福沢諭吉が何枚も…
ただでさえ、コーディネート中に迷惑を掛けてしまったのに。お見舞い金を事務所宛に送って頂くなんて…そうそう出来る事ではありません。
すぐさま御礼というか何というか、とにかく電話すると、「康介さんに嫌な気持ちをリセットして、良い気分になってもらえるにはどうしたらいいだろう?と妻と話した結果、そのようにしました。新しいバッグ等を買う足しにして下さい」と。
感動しました。
圧倒的なその対応に。
粋過ぎるその対応に。
凹んでいた気持ちが、大きな大きな優しさに触れて凸に向かっていきました。
大切な想いが詰まったバッグを盗られましたが、大切な想いを新たに頂きました。
今回の事は、僕にとって色々な意味で決して忘れる事のない事件です。
立花 岳志さん、本当にありがとうございました。